ワークショップ

実務者のための栄養管理プロセス研修会(2016年)

主催

名古屋学芸大学健康・栄養研究所

プログラムリーダー : 塚原丘美 名古屋学芸大学健康・栄養研究所 主任研究員
実行委員 : 立花詠子 名古屋学芸大学健康・栄養研究所 研究員
: 畠山桂吾 名古屋学芸大学健康・栄養研究所 客員研究員

主旨・目的

 栄養管理実務者による実践栄養学研究が求められている。その意義は、新しい栄養管理や治療方法のエビデンスを構築するだけでなく、日常業務の課題や問題点を整理し解決するためである。そのため、栄養管理を行う上で研究を行うことは必須であり、医療機関の管理栄養士は栄養・臨床系の学会に所属し、研究活動を行っている。
 本学部では2002年の開学以来、1000名以上の卒業生を輩出しているが、医療機関へ就職した卒業生が学会で発表、もしくは論文投稿するような研究活動を行っている者は非常に少ない。研究活動を行いたいと思っていても、職場内で研究活動を行う指導者がいるケースが少ないことが原因と思われる。そこで、平成26年度、27年度の2年間にわたって研修会を開催し、研究活動をサポートしてきた。その結果、2名の者が学会発表、論文発表を行うことができた。しかし、この研修会においてデータをどのように処理するのか、統計処理をどのようにするのかわからない、というケースが多かった。また、研修会に参加できなかった卒業生からも、統計処理をどうしたらよいのかわからない、という意見があった。そこで、平成28年度の研修会では、自力でデータの整理・統計処理ができることになることを目標にした研修会を開催した。

参加者

医療機関で数年間の実務経験がある管理栄養士 16名

開催日・場所

開催日:平成29年2月26日(日) 
開催場所:ウィンクあいち

内容

9:30-10:00
受け付け
10:00-11:00
講義:臨床研究を始めよう!
(講師)名古屋学芸大学管理栄養学部 塚原丘美
実務者である管理栄養士が臨床研究を行う意義、どんな内容で行うのが望ましいのか、などの講義を行った。これまでは、患者の栄養管理および給食管理が主な仕事内容であったが、これからは医療スタッフの一員であることからも研究を行うことが必須となっている。今回は、「何を研究したらよいのか」「どんな内容であればよいのか」といった、研究を始めるきっかけについて、の部分から解説を行った。また、研究活動を行う流れ、学会発表や論文作成の意義、さらに臨床研究における最も重要な臨床研究に関する倫理指針についても解説した。
11:00-1:30
講義:統計解析を始めよう!
(講師)名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科 川瀨文哉
研究を行う上で欠かせない統計解析を行う意義について講義を行った。また、統計解析で使用される用語について、併せて説明した。
11:30-13:00
休憩
13:00-16:30
演習:統計入門-EZRを使ってみよう!
(講師)名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科 川瀨文哉
実際に統計処理ソフトEZRを1人1台用いて、実際にEZRを使って統計解析を演習形式で行った。演習では実践的なデータを用いた。前半部分では2群の比較、χ2乗検定、Mann-WhitneyのU検定を行った。後半部分では3群の比較、回帰式の検定方法、および応用問題を行った。

まとめ

 統計処理をマスターするには、まとまった時間が必要であり、この度の1日の研修で研究データの統計処理を行なえるほど十分に理解できた参加者はいなかった。しかしながら、研修会後のアンケートでは、参加者の多くが、統計解析に関する理解度が深まったと回答していた。特にすでに発表経験のある者で、その傾向は高かった。一方、これから研究を始めようとしている者はデータを取り扱った経験が少ないことから、理解度が低かった。そのため、今後の改善点として、習熟度別(基礎編、応用編)に研修会を開催したい。

 この研修会の最終的な目標は、学会発表や論文作成ができるようになることである。これからも、実務者が研究活動を始める第一歩の手助けになるように、開催を続けていきたい。