ワークショップ

名古屋学芸大学健康・栄養研究所 ワークショップ
「実践につながる魅力的な教材作成と評価」(2013年) 第5回

テーマ

教材の進化と新しい教材の実践評価について発表

日時

平成26年 3月22日(土) 9:00~17:00

場所

ウインクあいち 1307会議室

指導

足立己幸 氏(名古屋学芸大学健康・栄養研究所 所長)
瀬口雅人 氏(名古屋学芸大学メディア造形学部 教授)
塚原丘美 氏(名古屋学芸大学管理栄養学部 教授)
安達内美子 氏(名古屋学芸大学管理栄養学部 専任講師)

教材の評価についてプレゼンテーション

前回のワークショップ終了から、約3か月の期間に、実際に作り上げた教材を使用した結果について、それぞれのワークショップごとに進化した内容を振り返りながら発表した。教材の特徴や効果などについて以下のような発表があった。

1)授業の最初から最後まで、教材(はてなBOX)を中心に進めることができ、児童の集中が分散しないようになった。また、人のキャラクターを用いたことで、児童の発想がふくらみ、活発な発言が増えたこともとてもよかった。(栄養教諭)

2)以前は、児童らに「食品の具体的な働きやなぜバランスよく食べないといけないのかわかりますか?」と投げかけると、答えられなかった。本教材を使用して支援し、その後のスペシャルウィークを設置したことで、給食を食べながら、「この食品は○○だね」、「本当は嫌いだけど○○な働きがあるから頑張って食べるよ」という児童から発言が見られ、学習したことを実生活の中で考えることができるようになるなど、より効果的な授業ができた。(栄養教諭)

3)何度も修正を行ったことにより、魅力的な教材に仕上がった。今まで廊下に掲示してあっても、教材に目を向ける人は少なかったが、足をとめて、地場産物がとれる場所を確認したり、食品ごとのシールの枚数を数えたりと、教材に目を向ける児童が多くなった。この新しい教材を使用したクラスでは、「給食に豊田市で食べ物がでることについてどう思いますか」の問に対し、以前より数値が上回り、9割以上の児童が「うれしい」、「残さずたべたい」と回答してくれた。(栄養教諭)

4)おやつは「補食」と伝えるのではなく、「楽しい時間」ということを意識して構成したことで児童にとって「話を聞きたい」という気持ちを持たせられたと思う。以前は、授業後半のまとめの部分になるにつれて、こちらが一方的に説明する形になっていた。しかし、児童に考えさせる機会(栄養表示からおやつクイズ、スナック菓子に含まれる脂質量の推定、おやつの3か条など)を多く作ったため、終始児童が興味を持って考えながら聞く姿勢が見られた。授業を受けて感じたことを目に見える形でまとめることで自分のこととしてとらえることができた。半数以上の児童が、冬休み中に「量を決めて食べる」「時間を決めて食べる」と目標をたてることができた。(栄養教諭)

5)話すポイントが一目で分かるような教材に仕上がった。食材の三色分けだけではなく、地産地食や「おいしい」を表現できるキャラクターを作り、名前をつけた。フェルトを使い手作りにすることで温かみがあるものに仕上がった。給食時間中の「かみもぐタイム」の5分間だけの指導であったが、キャラクターに名前をつけたことで、児童はすぐに覚え、「今日はどんな話をするのかな?」とわくわくしながら聞いていた。話す内容について指を使って示すことで、児童は集中して聞けていたように思う。特に、グッドさんは児童もすぐ真似することができ、「先生、おいしいよ!」と言って、親指をたてて話してくれる姿が印象的だった。また、事前・事後アンケートの結果より、「給食が好きですか?」「毎日、献立表を見てきますか?」「給食は楽しみですか?」という質問においてポイントが上がり、給食に対する興味関心が高まった。(栄養教諭)

6)患者それぞれの生活スタイルに合わせ、組み合わせを提案できる教材になった。中食などを取り入れる場合でも、その中で1食単位でも良いので料理をしてみようと思わせることが出来る教材となった。また、それぞれ患者がやってみたいと思う料理が自由に提案でき、それに対してきっかけとなる教材になった。患者の行動変容を起こすきっかけとなる教材になったのか、明確な検討はできていないが、教材配布時の患者の反応からは、自分だけの資料として喜んでおられる様子が見られ、今までの患者の反応とは違う手ごたえを感じることが出来た。(病院栄養士)

7)最終的な教材の特徴をキーワードで挙げるとしたら、シンプル、ポイント、変化の3点である。シンプルなデザイン、伝えたいポイントを絞り、患者さんの変化がわかるような内容になることで、行動変容によってもたらされる利益を視覚的に訴えることができるようになった。e-learning実施後のアンケートの自由記述においては、「わかりやすい、勉強になった、今後に活かせそう、楽しい」というような高評価が以前のものよりもたくさん得られた。
(病院栄養士)

8)ワークショップを通して、教室で伝えたいことを変更することはなかったが、スライドの見た目をすっきりさせることができ、配色にも配慮することで、伝えたいことが視覚的にもわかりやすくなり、最終目的をはっきりとさせることができた。目的や目標をはっきりさせることで、講義する際に強調したい部分が伝わるようになった。これまでの教室より熱心に聞かれる患者が増えた。(病院栄養士)

9)4回のワークショップを経て1冊にすべての情報が詰まっている、たくさんの絵からアプローチ、たくさんの色を使わずシンプルで見やすい、そして一緒に考えて記入する部分がある教材になった。病態の説明では、血管が傷ついていくメカニズムについて興味を持って聞いてくれる方が多くなり、そうならないためにどうしたらいいのかを考えながら話を進めることができた。以前の教材では指導後に患者さんはぐったりしていましたが、新しい教材では、一緒に考えたりすることで楽しんで学んでもらえたと思う。絵がたくさんあって眠くならないね、との声をいただいた。(病院栄養士)

このワークショップの参加者は教材を作るために何を考えないといけないかを知ることができた。またそれだけでなく、対象者を分析し、教材を活かすために多方面から支援方法を考え、実施した教材の評価を行うなど、実務者として多くのスキル研修にもなった。